礫岩 つぶていわ(287m) 長崎県


垂直に連なる岩峰


2008年11月4日

 礫岩は平戸市南部の早福(はいふく)町と大佐志町の間に位置する凝灰角礫岩の岩峰群である。

 一帯には貴重な植物が生育していて、平成14年3月に「平戸礫岩の岩石地植物群落」として国の天然記念物に指定されている。

 近年、この地域での盗掘が多く、貴重な指定地域や植物群を守るために、やむを得ず地域の人々や行政、警察が連携をした連絡体制が整えられている。

 この様な状況から、平戸市役所では入山時の無用なトラブルを避けるため、入山者には事前に市役所の文化遺産課(TEL 0950−22−4111)への連絡を求めている。

 私たちも当地のルールに沿い、事前に市役所へ連絡をして、入山することにした。

 その時に教えてもらったことは、
@登山道はない。
A道標は設置していない。
B初めての入山は、道迷いや転落など事故の危険性がある。
C初めての入山は、登山口やルートがわかりにくために、ガイ ド の案内が必要である。
Dガイドは、篤志家がボランティアで行っている。などである。

 そこで、早速ガイドの方に連絡をしてみた。

 すると、「イトラッキョウは、今ががちょうど見頃」とのこと。そして「別のグループから案内を依頼されているので、その日に一緒にどうぞ」と、誘っていただいた。しかし、日程(時間)が合わずに断念する。

 このような経過もあって、自分たちだけで入山をすることにした。めあては、イトラッキョウの観賞である。事前に地図を読み、自分たちなりに幾つかのルートを想定して現地に向かう。


 
[ここから先は、心ない人の入山や盗掘を防ぐため、仕方なく大まかな表現とする。さらに、地図やGPSの軌跡も省くことにする]

 当地は国立公園であり、天然記念物にも指定されている地域なので、行けば手がかりはあるだろうと軽く考えて臨んだが、甘かった。

 最初は、入山ポイントとして最も可能性が高いと想定をしたところで登山口を探す。そこでは、かすかな踏み跡らしいものを見つけて踏み込むが、20mほど進んだところで灌木の濃い藪とトゲ植物に阻まれて断念する。

 次は車で引き返す途中、農作業に来た人に出会い、登山道を尋ねる。すると「自分は歩いたことはないが、そのあたりから山に入ることができるのでは」と教えていただいた。
 喜び勇んで、教えてもらった辺りを行ったり戻ったりしながらていねいに探すが、人が歩いた痕跡は発見できずに断念。

 三つ目は、私たちが二番目に検討をつけていた所へ、車で移動をして登山口を探してみる。しかし、ここでも見つけることができない。時間の経過を気にしながら、次の想定場所へ移動する。

 ここは四カ所目である。地形図を見ながら可能性のあるポイントを探していると、農作業中の人に出会った。登山道を尋ねると「今は全くない」との返事に意気消沈。

 気を取り直して世間話をはじめると「若い頃、一度登ったことがある」とのこと。その方の年齢からすれば、50〜60年以上も前のことのようだ。しばらく話をしていると、「今は誰も歩かないので道はないが、入山するとすれば2本のルートが考えられる」と教えていただいた。

 それらのルートは、私たちが想定をしていたルートとぴったりと一致をしていて、嬉しくなる。

 丁寧にお礼を述べ、教えていただいた取り付き地点から藪の中を進む。

 ルート上には、人が歩いた形跡は全くない。ルートは、見通しが利かない樹林帯に入り、地図とコンパス、それにGPSを頼りに進む。やがて日当たりの良い岩場に出る。そこには、イトラッキョウやチョウセンノギクがたくさん咲いている。

 それらの花を心ゆくまで眺めて、先へ進む。しばらく歩くと、地形図に記載されている標高点のある岩峰のすぐ近くに着いた。

 標高点の所まで行くルートはないものかと探すが、私たちの技量や体力で登頂できそうなルートは見つけることができない。

 標高点へのルートは、往路で歩きながら観察をしたところでは、先ほど教えていただいたもう一本のルートからは可能なようだ。

 標高点への登頂は次の機会にして、この日は、色々なドラマがあったが、たくさんのイトラッキョウに出会えたことに満足をして、往路を引き返す。

 今回の反省点は、市役所の説明やガイドの方のお誘い通りにガイドの方に案内をしていただくべきだあったこと。
 次に、この山は初めての者にとってはルートの設定が想像以上に難しく、安易な入山は慎むべきであったことなどである。

イトラッキョウ


オトメラッキョウ(イトラッキョウの白色種)


チョウセンノギク


礫岩の岩峰群


海岸の棚田


ツワブキ


途中から見た海辺の風景


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