祖母山(1756m)  大分県


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11月11日

 豊後大野市の尾平登山口から黒金山尾根を辿り山頂へ。復路は九合目小屋を経て宮原へ周回した。距離は14.6km、所要時間は7:25であった。

 私たちは祖母山や傾山への縦走ルートは何度も歩いているが、今回の周回ルートは初めてである。
 初めてのルートは、山道や見るもの全てが新鮮で、一歩ごとの小さな冒険にいつも心が弾む。この適度な緊張感を伴ったときめきは、何物にも代え難い魅力の一つでもある。

 今日は山腹の紅葉を期待しての山行だ。登山道はよく保全され、要所にはわかりやすい道標も整備されていて、安心をして歩くことができた。

 登山口からは、奥岳川に沿って進む。その水は澄み、清冽な流れには色とりどりの落ち葉が浮び、淵ではゆっくり、瀬ではリズミカルに躍るようにしながら流れ下っていた。

 黒金山尾根は急な登りであるが紅葉はちょうど見頃で、鮮やかな彩りを愛でながら歩いていると、疲れを忘れるほどだ。

 稜線が近くなると木々はほぼ落葉をしていたが、山頂では思いがけないプレゼントが待っていた。この秋、初めて見る霧氷が白く輝いていた。この嬉しい出会いに、先ほどまでのきつさを忘れて笑みが浮かぶ。山腹は秋、山頂は冬である。山はこれら二つの季節を同時に見せていた。

 山頂からは古祖母山から笠松山、傾山にかけての長大な山並みが連なっていた。

 登山道には「クマに注意」の看板があった。以前「この山域のクマは絶滅した」との宣言が出され、報道をされた。私たちもそのように思っていたので不思議に思い、地元の方に尋ねてみた。その方の話では、祖母山から傾山にかけての山域にはクマが棲息しているようだ。

 近年、木につけられたクマの爪あとや声、すぐ近くで藪の中を動
くクマの気配に遭遇した、などの情報があるそうだ。
 クマの個体数は非常に少ないようで「この山域のクマは人を極度に恐れていて、姿を見せることはまずない」との話であった。

  実は、昨年私たちは祖母山の山頂で、登山者から「つい最近、この山域でクマの足跡を見たことがある。また、別の日には、登山中に近くでクマが移動をする独特の気配を感じたこともある」との話を聞いていたが、まさか、と思っていた。しかし、その登山者の話は具体的で、シカやイノシシとは異なるクマの気配は、私たちが中国山地で経験したことと全く同じであり、忘れることはできなかった。そのことに加えて、今日の地元の方の話である

 今年も11月15日から狩猟が始まり、ツキノワグマもその対象になっている。
 クマがこの山域の棲息しているとすれば、まだ豊かな自然が残っている証である。数が少なくなったクマが今も生き続けているとすれば、絶滅をさせることなく、人と共存できる自然環境の保全や、人間社会の新たなルールが早急に整えられることを、私たちは願っている。 

祖母山

 
清冽な奥岳川の流れ

天狗の岩屋


山頂の霧氷


登山道で見た看板

中腹の紅葉



奥岳川に架かる吊り橋

 
緑濃いスギゴケ


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