北海道 利尻山(1,719m)

 


海岸から見た利尻山


6月2日

 利尻富士町の利尻北麓野営場から山頂を往復した。所要時間は9:50。
 利尻山は秀麗な山容から、利尻富士とも呼ばれて親しまれている。
利尻山への登山は4回目であが、頂に立つことができたのは、今回で3度目である。

 登山口の標高は213m、山頂までの標高差は1500m近くあり、登りごたえのある山である。
 この時期の利尻山は気象の変化が早く、春と冬が瞬く間に替わるとも言われるほど気象の変化が激しい山で、風が強いことでも知られている。入山に当たっては気象に対する慎重な判断が求められる。

 麓から眺める利尻山は雪がかなり残っているようであり、入山前に町役場と環境省のレンジャーから、登山道や積雪の状況などの詳しい情報と提言を得た。
 レンジャーによる数日前の調査登山では「雪はかなり残っており、山頂付近は氷化している。アイゼンは10本爪以上が必要で、当然ピッケルも必携」とのことであった。この説明を受けて、荷物は重たくなるが、完全な冬山の装備で登ることにした。

 北海道の夜明けは早い。午前3時ごろには夜が明け始め、3時半にはすっかり明るくなる。出発は午前4時、快晴。気温は4℃とかなり冷え込んでいるが、風はほとんどなく、絶好の山日和だ。

 登山道は8合目までは雪もなく、快適に歩くことができたが、9合目から先はかなりの雪があり、急斜面のトラバースでは滑落や雪崩の誘発に注意をしながら慎重に歩を進めた。雪質はほどほどに柔らかく、アイゼンは着けずに山頂まで登ることができた。
 山頂は雲一つない快晴で、展望は360度。しかし、4合目から
下は雲海が発生していて、期待していた海岸線の風景は全く見ることができなかった。
 下山は山頂でアイゼンを着け、急傾斜の雪の斜面を一歩一歩、慎重に下った。幸いにも風は弱く、ガスもかからずに好天に恵まれ、計画通りに下山することができたのは幸運である。

 途中の積雪帯で雪を食べてみた。こんなにおいしい雪は久しぶりである。この時期は雪
の表面には砂や土の粒がたくさん乗っていて、色も薄黒くてとても食べる気にはならないものであるが、雪の表面を2〜3cmピッケルで削ると、そこは純白の雪である。この真っ白な雪を手ですくって口に含むと不純物のない純粋な雪の味わいである。あまりのおいしさに、歩きながら何回も何回も口に運び、乾いた喉を潤した。
 近頃の雪は口に含むと埃っぽく、なんとなくいやな感じがするものであるが、利尻山の雪はその埃っぽさが全く感じられない素晴らしい雪である。この雪を造ったのは、環境汚染が少ない北極圏辺りからやってきた寒気であろうか。

 中腹から下では点々とザゼンソウが点々と顔を出し、たくさんのギョウジャニンニクが雪解けを待っていたかのように、一斉に葉を伸ばし始めていた。登山口の近くでは、白いツバメオモトの花が咲き始め、顔を近づけるとほのかな香りを漂わせていた。

山頂の祠


 
8合目の長官山から見た山頂



おいしい雪 左側

左は積雪の表面を2〜3cm削った純白の雪面

右は積雪の表面 砂や土の粒がたくさん乗っている


エゾエンゴサク


ツバメオモト


ギョウジャニンニク


ザゼンソウ


     リシリヒナゲシ
登山口近くの公園に咲いていたもの
山頂付近では7月下旬頃に咲く


タチツボスミレ




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